臨床神経学

症例報告

構音障害をともなった封入体筋炎の1例

諌山 玲名, 滋賀 健介, 田中 瑛次郎, 五影 昌弘, 徳田 隆彦, 中川 正法

Corresponding author: 京都府立医科大学神経内科〔〒602―8566 京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465〕
京都府立医科大学神経内科

構音障害を呈した封入体筋炎(IBM)の1例を経験した.症例は71歳男性で,3年前から徐々に握力の低下,しゃべりにくさ,下肢筋力低下が進行するため受診した.舌・前腕屈側・大腿内側の筋萎縮,深指屈筋・大腿四頭筋の筋力低下と構音障害をみとめた.嚥下障害は明らかでなかった.外側広筋の筋生検で,筋線維の大小不同と炎症細胞浸潤,縁取り空胞をともなう筋線維をみとめ,IBMと診断した.舌筋の針筋電図で,低振幅の運動単位電位,安静時の線維自発電位をみとめ,本症例の構音障害の原因として舌筋の障害が推測された.IBMでも,まれではあるが構音障害が合併することがあり,今後注目すべき症候と考え報告する.
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(臨床神経, 50:695−699, 2010)
key words:封入体筋炎,構音障害,嚥下障害,舌筋

(受付日:2010年3月11日)