臨床神経学

総説

日本人多発性硬化症の臨床研究における最近の進歩

吉良 潤一

Corresponding author:九州大学大学院医学研究院神経内科学分野〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
九州大学大学院医学研究院神経内科学分野

日本人の多発性硬化症における近年の臨床研究の進歩として,(1)第4回全国多発性硬化症臨床疫学調査により,わが国における有病率の増加や病像の変化が明らかにされたこと,(2)免疫担当細胞,とくにTh17細胞の発見とその視神経脊髄型多発性硬化症への関与が示されたこと,(3)中枢神経の主要な水チャネル分子であるアクアポリン4に対する自己抗体の発見から視神経脊髄炎の研究が大きく進展したこと,(4)インターフェロンベータの臨床応用により多発性硬化症の経過が多くの例で改善したが,一方,無反応例が視神経脊髄型多発性硬化症や抗アクアポリン4抗体陽性例で多いことが示されたこと,などがあげられよう.今後,さらに多発性硬化症や視神経脊髄炎の病態解明が進むとともに,わが国でも多発性硬化症の病態に重要なプロセスをターゲットとした分子標的療法の導入が期待される.
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(臨床神経, 49:549−559, 2009)
key words:多発性硬化症, 疫学, 視神経脊髄型多発性硬化症, 通常型多発性硬化症, 視神経脊髄炎, 抗アクアポリン4抗体

(受付日:2009年8月20日)