臨床神経学

症例報告

脳梁の脳表側とこれに隣接した左右大脳半球に病変をみとめ,多発性硬化症がうたがわれた1症例

白藤 俊彦1)2), 大矢 寧1), 中村 治雅1)3), 尾方 克久1)4), 小川 雅文1), 川井 充1)4)

1)国立精神・神経センター武蔵病院神経内科〔〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1〕
2)現 神戸大学神経内科〔〒650-0017 神戸市中央区楠町7丁目5-2〕
3)現 薬剤評価機構医薬品医療機器総合機構〔〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2〕
4)現 国立病院機構東埼玉病院神経内科〔〒349-0196 埼玉県蓮田市黒浜4147番地〕

脳梁の脳表側と隣接した両側前頭葉に病変を呈し,生検で脱髄所見をみとめ,多発性硬化症(MS)がうたがわれた26歳女性を報告した.階段状に進行する右下肢の不全片麻痺と右下肢位置覚低下を呈した.MRIで脳梁脳表側と隣接する両側帯状回から左中心前回白質にガドリニウム(Gd)増強病変をみとめた.初発の5カ月後に延髄背側,10カ月後に右内包膝部・淡蒼球・尾状核の病変をみとめ,空間的,時間的多発性が確認された.MSの脳梁病変は一般に脳室側に生じるが,本例は脳表側で,大脳皮質に沿う病変と隣接していた.脳梁脳表側と大脳皮質下白質に連続してみえる病変は,とくに皮質下のGd増強効果をともなうばあい,MSを考える必要がある.
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(臨床神経, 48:321−327, 2008)
key words:多発性硬化症, 脳梁, MRI, 脱髄, 皮質下ガドリニウム増強病変

(受付日:2007年3月1日)