臨床神経学

短報

rt-PA静注療法後に口舌血管性浮腫を呈したACE阻害薬服用中の心原性脳塞栓症の1例

岡田 陽子, 芝崎 謙作, 坂井 健一郎, 小林 和人, 井口 保之, 木村 和美

川崎医科大学 脳卒中医学教室〔〒701-0192 岡山県倉敷市松島577〕

症例は75歳の女性である.高血圧に対してACE阻害薬を服用していた.意識障害,全失語,右不全片麻痺,右Babinski徴候をみとめ,頭部MRI拡散強調画像で左島皮質に高信号,MRAで左中大脳動脈の閉塞をみとめた.心電図モニタリングで心房細動をみとめ,心原性脳塞栓症と診断した.発症3時間以内であり,rt-PA静注療法(アルテプラーゼ0.6 mg/kg)をおこなった.その60分後に著明な両側の口舌血管浮腫を呈し,rt-PAの副作用と判断し,浮腫出現30分後にステロイドを投与した.その20時間後に口舌血管性浮腫は改善した.ACE阻害薬を服用中に脳梗塞を発症した患者におけるrt-PA静注療法は,合併症として口舌血管性浮腫を念頭に置かなければならない.
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(臨床神経, 48:278−280, 2008)
key words:rt-PA療法, 口舌血管性浮腫, ACE阻害薬

(受付日:2007年11月5日)