臨床神経学

短報

脂肪抑制MRI T2強調画像で病巣側に“tram-track”signと“donut configuration”がみられたTolosa-Hunt症候群

田村 麻子1), 谷口 彰1), 落合 直美2), 佐々木 良元1), 成田 有吾1), 葛原 茂樹1)

1)三重大神経内科〔〒514-8507 三重県津市江戸橋2丁目174番地〕
2)愛知医大精神科

症例は60歳女性である.主訴は左眼周囲の疼痛,神経学的に左上眼瞼の触覚低下,左眼のぼやけ感,対光反射遅延,外転制限をみとめた.血液検査では赤沈が亢進し,MRIで左眼窩先端部に造影効果をともなう腫瘤性病変をみとめ,Tolosa-Hunt症候群(THS)と診断した.ステロイドのパルス療法と経口投与によって,症状は消失した.脂肪抑制MRI T2強調画像で,左視神経周囲の髄液腔拡張が,水平断では線路状に平行に走るtram-track sign,前額断にてリング状のdonut configurationとして描出された.右側に症状が出現した2年前のMRIを確認したところ,右視神経周囲に同様の所見をみとめ,これらは,症状改善後に消失していた.これらのMRI所見は脂肪抑制T2強調画像で容易に描出され,臨床経過とも対応するので,THSの診断と治療効果の判定に有用である.
Full Text of this Article in Japanese PDF (508K)

(臨床神経, 48:271−274, 2008)
key words:Tolosa-Hunt症候群, tram-track sign, donut configuration, 視神経

(受付日:2007年12月27日)