臨床神経学

症例報告

急性散在性脳脊髄炎様病態を続発した,肺炎球菌性髄膜脳炎の1例

呉城 珠里, 葛本 佳正, 青松 宏美, 楠 進

近畿大学医学部神経内科〔〒589-8511 大阪府大阪狭山市大野東377-2〕

症例は57歳の女性である.上気道炎症状が出現後,髄膜刺激症状をともなった頭痛,異常行動が出現.臨床検査より肺炎球菌性髄膜脳炎と診断した.頭部MRIでは散在性の大脳白質病変をみとめた.抗生剤治療により炎症所見,髄膜刺激所見は改善するも,MRIでみられた,散在性の白質病変は更に増悪,これらはステロイド投与により改善した.本症例では,肺炎球菌性髄膜脳炎を契機に急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis:以下,ADEMと略)類似病態を併発したと考えた.肺炎球菌性髄膜炎後のADEMの報告はきわめてまれであるが,細菌性髄膜炎にともなう病態の一つとして考慮が必要と考えられた.
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(臨床神経, 48:255−258, 2008)
key words:ADEM, 細菌性髄膜脳炎, 肺炎球菌, 白質病変, ステロイドパルス療法

(受付日:2007年2月24日)