臨床神経学

症例報告

たこつぼ型心筋症を合併した筋萎縮性側索硬化症の剖検例

松山 友美1)6), 笹ヶ迫 直一1), 小池 明広2), 松浦 理城3), 古賀 孝臣3), 川尻 真知4), 大八木 保政4), 岩城 徹5), 吉良 潤一4)

1)国立病院機構 福岡東医療センター神経内科〔〒811-3195 福島県古賀市千鳥1丁目1-1〕
2)同 循環器科
3)九州大学医学研究院 病理病態学〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
4)同 神経内科
5)同 神経病理学分野
6)現 国家公務員共済組合連合会 浜の町病院神経内科〔〒810-8539 福岡市中央区舞鶴3丁目5-27〕

症例は63歳の男性である.1998年右手脱力,翌年に左手脱力が出現し,徐々に進行した.2003年首下がり,2004年11月下肢脱力が出現した.臨床的には進行性の下位運動ニューロン症状が主体であった.2005年2月嚥下性肺炎で緊急入院した.入院9日後気管切開,同13日後心電図モニター上ST上昇,特徴的心エコー所見からたこつぼ型心筋症と診断した.循環管理をおこない一旦小康状態になるもふたたび血圧低下し,治療に反応せず入院37日後死亡した.剖検上心筋に梗塞巣はなく,心尖部・心基部のびまん性心筋変性と線維化をみとめたが死因は確定できなかった.神経病理学的には筋萎縮性側索硬化症(ALS)の所見であった.ALSでたこつぼ型心筋症を合併した例のはじめての剖検報告である.
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(臨床神経, 48:249−254, 2008)
key words:運動ニューロン疾患, 筋萎縮性側索硬化症, たこつぼ型心筋症, 剖検

(受付日:2006年10月31日)