臨床神経学

第49回日本神経学会総会

<シンポジウム4-1>多発性硬化症の病態と治療:臨床と基礎の最前線
病態の解明をめざして「臨床からの考察」

吉良 潤一

九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕

多発性硬化症(Multiple sclerosis,MS)は,中枢神経髄鞘抗原を標的とする臓器特異的な自己免疫疾患とされる.病態の進行は,神経抗原に対する自己免疫としてのantigen-driven diseaseという面と,抗原に無関係に進行するprocess-driven diseaseとしての面がある.MSの病態研究はTh17細胞の発見と抗aquaporin-4(AQP4)抗体の発見により,分子レベルでの解明が急速に進みつつある.Mayo Clinicおよび東北大学からは,NMOはNMO-IgG/抗AQP4抗体がアストロサイトを障害し二次的に脱髄をおこしており,MSとはまったくことなるものであるという仮説が出されている.もう一つの考え方は,Th17細胞(あるいはTh1細胞)が寄与するT細胞性炎症により選択的で壊死性の病巣が形成され,抗AQP4抗体は病態を修飾しているのではないかというものである.今後,T細胞性免疫の立場と液性免疫の立場の両者から病態解明が進んでいくことが期待される.
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(臨床神経, 48:931−933, 2008)
key words:多発性硬化症, Th17, NMO-IgG, 抗aquaporin-4抗体, 視神経脊髄炎

(受付日:2008年5月16日)