臨床神経学

第49回日本神経学会総会

<シンポジウム10-3>ミトコンドリア病治療の現況と将来
治療戦略のためのモデル動物

中田 和人, 佐藤 晃嗣, 林 純一

筑波大学大学院生命環境科学研究科〔〒305-8572 茨城県つくば市天王台1-1-1〕

ミトコンドリア病の多くの症例から特定の点突然変異や欠失突然変異を有したミトコンドリアDNA(mtDNA)が検出されている.さらに,糖尿病や神経変性疾患の発症や個体老化にも変異型mtDNAの関与が示唆されており,ミトコンドリアゲノム変異と多様な病態との因果関係が注目を集めている.このような状況の中,われわれは世界に先駈けて病原性欠失突然変異型mtDNA(欠失型mtDNA)を導入したマウス(ミトマウス)の作製に成功した.欠失型mtDNAを80%以上含有するミトマウスはミトコンドリア病でみられるような多様な病態を発症することから,ミトマウスはミトコンドリア病のモデルマウスであると結論できた.ミトマウスの登場によって,ミトコンドリア病の病態発症機構の解明だけでなく,効果的な治療法を探索するための環境がようやく整ったといえる.
Full Text of this Article in Japanese PDF (291K)

(臨床神経, 48:1013−1015, 2008)
key words:ミトコンドリアゲノム変異, 呼吸不全, ミトコンドリア病, モデルマウス, 核移植治療

(受付日:2008年5月17日)