臨床神経学

症例報告

半側の病変を呈した高血圧性脳症の1例

齊藤 真紀, 高野 政彦, 田部 浩行

新潟県立中央病院神経内科〔〒943-0147 上越市新南町205番地〕

症例は20歳女性,頭痛,嘔吐の後,てんかん重積となり入院した.発熱,血液検査で炎症所見,髄液検査で細胞数と蛋白の上昇をみとめ,初診時は脳炎の可能性を考えた.入院後に脈の左右差と高血圧が判明し,画像上頸動脈や腎動脈の狭窄所見をみとめ,高安動脈炎による高血圧性脳症と診断した.頭部MRIでは左側大脳皮質中心に血管性浮腫の所見をみとめた.入院後,降圧治療により痙攣も画像所見も改善した.高安動脈炎の初発症状として高血圧性脳症を呈する例は少ないが,若年者のてんかんや意識障害の原因を鑑別する上で注意すべき疾患である.また病変が大脳半側のみに生じた点は,本例のような基礎疾患による高血圧性脳症に特徴的である可能性が考えられた.
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(臨床神経, 48:25−29, 2008)
key words:高安動脈炎, 高血圧性脳症, 半側, 血管性浮腫, てんかん発作

(受付日:2006年12月13日)