臨床神経学

短報

進行性歩行障害,中脳中心灰白質病変,髄液アンギオテンシン転換酵素相対的高値が,ステロイド治療で軽快した,中枢神経系サルコイドーシスうたがい例

伊藤 康男, 中里 良彦, 富岳 亮, 田村 直俊, 島津 邦男

埼玉医科大学神経内科〔〒350-0495 埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38〕

症例は33歳の男性である.主訴は歩行障害.2年前からふらつき歩行が徐々に増悪したため入院した.脳神経,腱反射に異常なく,運動麻痺もなかった.表在・深部感覚に異常なく,四肢協調運動にも異常はなかった.歩行は不安定でつぎ足歩行は不能であった.脳脊髄液検査は細胞数増加,糖低下と髄液アンギオテンシン転換酵素(ACE)の相対的高値がうたがわれた.脳MRIで中脳中心灰白質に造影効果あり.CTで両側肺門部リンパ節腫脹をみとめ,中枢神経サルコイドーシスがうたがわれた.ステロイドで歩行障害,画像所見は改善.髄液ACE値は低下した.歩行障害の原因として中枢前庭障害を考察した.

(臨床神経, 47:512−515, 2007)
key words:中枢神経サルコイドーシス, 髄膜脳炎, 中心灰白質, アンギオテンシン変換酵素

(受付日:2006年9月29日)