臨床神経学

短報

頭痛と外転神経麻痺で発症した側頭動脈炎

荒井 元美, 勝又 隆太

聖隷三方原病院神経内科〔〒433-8558 静岡県浜松市北区三方原町3453〕
現 名古屋市立大学病院精神科〔〒467-8602 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1〕

71歳の男性例を報告した.後頸部から肩の鈍痛,顎跛行が数日間続いた後,激しい拍動性の頭痛が現れ,その2日後に水平性複視が突然出現した.右眼はまったく外転しなかったが,内転,上転,下転は正常であった.眼瞼下垂,眼瞼浮腫はみられず,瞳孔や他の脳神経機能,四肢の筋力,表在感覚は正常であった.浅側頭動脈が怒張し,圧痛が強かった.CRP増加と赤沈亢進がみられた.浅側頭動脈生検所見から側頭動脈炎と確定診断した.プレドニゾロン50 mg内服開始から10日以内に右眼の眼球運動は正常化した.外転神経の完全麻痺を合併した側頭動脈炎はまれである.失明を防ぐためにも,側頭動脈炎は高齢者の外眼筋麻痺の鑑別診断として重要である.

(臨床神経, 47:444−446, 2007)
key words:側頭動脈炎, 外転神経麻痺, 副腎皮質ステロイド, 失明

(受付日:2007年2月26日)