臨床神経学

症例報告

抗EBウイルス抗体価の上昇をともなったstiff-person症候群

大原 久仁子, 大澤 美貴雄, 竹内 恵, 鈴木 美紀, 内山 真一郎, 岩田 誠

東京女子医科大学神経内科〔〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1〕

Stiff-person症候群は,筋硬直,筋固縮,発作性筋攣縮を主症状とする比較的まれな疾患で予後不良とされているが,近年治療の奏功例も報告されている.われわれも,軽快した本症候群の1例を経験した.症例は,56歳男性で,感冒様の症状が前駆し,自発性に,または第3頸髄レベル以下の触・痛覚刺激で誘発される両下肢有痛性伸展硬直発作,腰椎後彎発作が亜急性に増加した.また両下肢の腱反射亢進,両側Babinski徴候,振動覚低下もみられた.硬直発作はジアゼパムにより軽快したが,同薬の中止後も増悪しなかった.経過中抗GAD抗体は陰性であったが,抗Epstein-Barr(EB)ウイルス抗体価の上昇がみとめられた.検索しえたかぎりではEBウイルス感染にともなった本症候群の報告はない.近年,ウイルス感染を契機に発症した本症候群が散見され,本例でもウイルス感染が本症候群の発症に関与したと考えられる.

(臨床神経, 47:434−436, 2007)
key words:Stiff-person症候群, 抗EBウイルス抗体, GABA系ニューロン, ジアゼパム

(受付日:2007年1月5日)