臨床神経学

症例報告

再発性髄膜炎を呈し臨床的にリンパ球性下垂体炎と診断された1例

加藤 修明1), 町田 香津子1), 佐藤 俊一1), 矢彦沢 裕之1), 池田 修一2)

1)長野赤十字病院神経内科〔〒380-8582 長野県長野市若里5-22-1〕
2)信州大脳神経内科, リウマチ・膠原病内科〔〒390-8621 長野県松本市旭3-1-1〕

症例は閉経後の55歳女性である.頭痛と発熱を主訴に来院した.著明な項部硬直があり,髄液検査で好中球優位の細胞増加をみとめた.細菌性髄膜炎をうたがったが細菌検査は陰性で,頭部MRIで造影効果をともなう下垂体および下垂体茎の腫大と尿崩症の出現をみとめ,臨床的にリンパ球性下垂体炎と診断した.自然軽快したものの3カ月後に髄膜炎が再発し,下垂体機能は低下して頭部MRIで下垂体がふたたび腫大していた.ステロイド治療にてすみやかに症状は消失し,下垂体腫大および下垂体機能も改善した.臨床的にリンパ球性下垂体炎と診断される症例で,感染性の疾患との鑑別が問題となるような髄膜炎を呈した例を経験した.診断には髄液検査に加えて頭部画像検査と内分泌学的検査が有用であり,下垂体炎と髄膜炎に対してはステロイド治療が有効であった.

(臨床神経, 47:419−422, 2007)
key words:リンパ球性下垂体炎, 髄膜炎, 下垂体腫大, ステロイド治療

(受付日:2006年9月20日)