臨床神経学

短報

糖尿病および多発ニューロパチーを合併した高齢発症SPG4(spastin 1726T>C)の孤発例

福永 真実1), 大八木 保政1), 森田 光哉2), 重藤 寛史1), 谷脇 考恭1), 吉良 潤一1)

1)九州大学大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
2)自治医科大学神経内科〔〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1〕

症例は73歳である.男性.長年の飲酒歴,53歳頃より糖尿病あり.64歳頃より両下肢つっぱり感と歩行困難・残尿感が出現し,70歳頃に杖歩行.その後,両足の異常感覚と頻尿・尿失禁を生じた.同症状の家族歴はなかった.両下肢の痙縮と軽度脱力,腱反射亢進・病的反射陽性,両足の感覚障害,頻尿・排尿困難,高度の痙性歩行がみられた.本邦では新規のSpastin遺伝子1726T>C(Leu534Pro)変異をみとめ,SPG4と診断した.多発ニューロパチーを合併した高齢孤発例であり,診断に苦慮した1例だった.

(臨床神経, 47:359−361, 2007)
key words:SPG4, spastin, 新規変異, 多発ニューロパチー, 糖尿病

(受付日:2006年12月23日)