臨床神経学

症例報告

Brodmann1, 2野に限局した脳梗塞巣により手指の複合感覚障害と巧緻性障害を呈した1例

久徳 弓子, 萩原 宏毅, 市川 弥生子1), 武田 克彦2), 砂田 芳秀

川崎医科大学神経内科〔〒701-0192 岡山県倉敷市松島577〕
1)現 東京大学医学部神経内科〔〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1〕
2)現 国際医療福祉大学三田病院神経内科〔〒108-8329 東京都港区三田1-4-3〕

症例は70歳女性である.基本的な感覚は保たれているものの複合感覚障害主体の体性感覚障害と手指の巧緻運動障害をみとめた.頭部MRI所見,SEP所見の結果からBrodmann 3b野は障害されず,1, 2野のみ障害された脳梗塞と考えた.Brodmann 1野から2野にかけては基本的な感覚の処理からより高度な形の認識,識別などの処理がなされると提唱されており,その部位が障害されたためこのような症状をきたしたと考えた.また,体性感覚障害が閉眼時の手指の巧緻性の障害に大きくかかわっていると考察した.

(臨床神経, 47:151−155, 2007)
key words:脳梗塞, 中心後回, 体性感覚, 複合感覚障害

(受付日:2006年3月16日)