臨床神経学

症例報告

高熱およびMRIでの脳梁膨大部の左右進展性病変をみとめ,その後意識障害をきたした66歳男性例

西本 祥仁1), 五十棲 一男1), 潮田 隆一2), 小松本 悟1), 福内 靖男1)

1)足利赤十字病院 神経内科〔〒326-0808 栃木県足利市本城3-2100

2)足利赤十字病院 放射線科

高熱および脳梁膨大部の正中をふくむ左右に進展するMRI T2強調画像での高信号を示し,その後意識障害をきたした66歳男性の自験例を報告する.入院時には高熱に加えて左第2・3指にミオクローヌス様の不随意運動がみとめられ,MRI検査で脳梁膨大部にT2強調画像で高信号を示す左右への進展性病変が示された.同部位はMRI拡散強調画像において高信号を示し,新たな病変と考えられた.ステロイドパルス治療をおこなったところ,同時期より意識レベルの低下,DICが続発したが,低分子ヘパリンの投与により徐々に意識障害,ミオクローヌス様不随意運動は改善を示した.2カ月後のMRI FLAIR画像では変化をみとめなかったが,発症7カ月後には脳梁膨大部自体が萎縮傾向にあった.本症例では,感染に続発する脳梁膨大部の左右進展性の脱髄性疾患がもっともうたがわれた.

(臨床神経, 47:73−78, 2007)
key words:脳梁膨大部, 意識障害, MRI, 脱髄

(受付日:2006年1月23日)