臨床神経学

第48回日本神経学会総会

<日本神経学会2006年度学会賞受賞者招待講演>
ヒトの随意運動における補足運動野の機能と臨床的意義

池田 昭夫

京都大学・医学研究科・脳病態生理学講座 臨床神経学〔〒606-8397 京都市左京区聖護院川原町54〕

臨床的に補足運動野(SMA)は難治てんかん発作の焦点となり特有の症状を呈し,またその機能変容はパーキンソン病,ジストニアの症状を発現する.随意運動に先行する運動準備電位(BP)の研究の結果,1)固有補足運動野(SMA proper)にはsomatotopy(体性機能局在)があり,それに応じてBPを発生する,2)左右各々のSMA properは両側の運動に同等に関与し,また一次運動野と同等に関与する,3)前補足運動野(pre-SMA)は,刺激識別と運動選択,随意運動の抑制において有意に活動する,ことを明らかにした.臨床的に,4)SMA発作はpre-SMAとSMA proper由来でことなり,前者は陰性運動発作,後者はSMA発作として記載される典型的症状を示す.SMA発作もSMA proper内でmarchすること,陰性運動発作は様々な陽性運動症状で容易に不明瞭となること,が示された.brain-computer interfaceに応用して,対麻痺・脊髄損傷・運動ニューロン病などにおける評価と機能回復への応用も期待される.

(臨床神経, 47:723−726, 2007)
key words:補足運動野, 運動準備電位, 随意運動, てんかん, 運動異常症

(受付日:2007年5月16日)