臨床神経学

症例報告

脳梗塞をともなったinnominate artery stealの1例

安田 高志1), 小林 健二2), 高橋 若生1), 瀧澤 俊也1), 金渕 一雄3), 高木 繁治1)

1)東海大学医学部神経内科〔〒259-1193 神奈川県伊勢原市望星台〕
2)同 総合内科
3)同 心臓血管外科

症例は49歳の男性で,2004年6月急性大動脈解離を発症し,上行弓部大動脈人工血管置換術が施行されている.2006年8月突然左片麻痺が出現し,当院に搬送された.MRI拡散強調画像およびMR angiography(MRA)で,右放線冠の脳梗塞と右中大脳動脈起始部での閉塞がみとめられた.頸動脈超音波検査では,腕頭動脈が閉塞しており,パルスドップラー超音波とMRAの血流位相画像にて,右椎骨動脈の逆流および右総頸動脈の順行性血流が確認された.本症例は腕頭動脈の閉塞により右椎骨動脈が逆流する,いわゆるinnominate artery stealを示し,腕頭動脈の血栓による脳塞栓症を併発したものと考えられた.

(臨床神経, 47:644−649, 2007)
key words:腕頭動脈盗血, 脳梗塞, 人工血管, MR血管撮影, ドップラー超音波検査

(受付日:2007年1月12日)