臨床神経学

日本神経学会賞受賞

軸索型Guillain-Barré症候群の発症機構の解明

結城 伸泰

獨協医科大学内科学(神経)・免疫性神経難病センター〔〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880〕

下痢を前駆症状としたGuillian-Barré症候群(GBS)患者を受け持ち,その先行感染因子が下痢症や食中毒の主要な起因菌Campylobacter jejuniであることを突き止めた.C. jejuni腸炎後に,GM1ガングリオシドに対するIgGクラスの自己抗体が上昇し,軸索が傷害されるGBSのサブグループが存在することを報告した.下痢を前駆症状としたGBSから分離されたC. jejuniの菌体外膜を構成するリポオリゴ糖がGM1類似構造を有することを明らかにした.GM1, C. jejuniリポオリゴ糖をウサギに感作し,臨床的にも,免疫学的にも,病理学的にも,ヒトの病気と一致する疾患モデルを樹立することに成功し,新しい治療法の開発に役立てることができるようになった.糖鎖相同性により自己免疫病が発症しうるという新しい概念が,他の原因不明の自己免疫病の解明にも役立つことを期待している.

(臨床神経, 47:1−7, 2007)
key words:抗GM1抗体, Campylobacter jejuni, Guillain-Barré症候群, 分子相同性

(受付日:2006年5月11日)