臨床神経学

症例報告

頭部外傷の1年後にhyperkinésie volitionnelleを呈し,両側視床Vim核脳深部刺激療法が著効した1例

高堂 裕平1), 下畑 享良1), 寺島 健史1)2), 諏訪園 秀吾2)3), 亀山 茂樹4), 田中 惠子1), 西澤 正豊1)

1)新潟大学脳研究所神経内科〔〒951-8585 新潟市旭町通1番町757番地〕
2)新潟大学脳研究所統合脳機能研究センター
3)現・国立病院機構沖縄病院神経内科
4)国立病院機構西新潟中央病院脳神経外科

頭部外傷の約1年後,両側上肢に目標とする方向とは逆向きの粗大な運動を特徴とするhyperkinésie volitionnelle(HV)が出現し,緩徐進行性に増悪した69歳男性を経験した.本例のHVの発症にはびまん性軸索損傷の関与が推測されたが,責任病巣は不明であった.三次元非等方性コントラスト磁気共鳴軸索画像および運動関連皮質電位では,従来HVの責任病巣とされてきた小脳出力系の異常はみとめなかった.視床Vim核の脳深部刺激療法により本例のHVはほぼ消失した.本例により外傷後の振戦型HVは小脳出力系に異常が同定できなくても出現しうること,また視床Vim核のDBSは検討すべき治療法であることが示された.

(臨床神経, 46:638−643, 2006)
key words:hyperkinésie volitionnelle, びまん性軸索損傷, 三次元非等方性コントラスト磁気共鳴軸索画像, 運動関連皮質電位, 脳深部刺激療法

(受付日:2006年3月1日)