臨床神経学

症例報告

進行性多巣性白質脳症と考えられた症例の拡散テンソル画像による経時的検討

松井 尚子1), 中根 俊成1), 原田 雅史2), 古谷 かおり3), 和泉 唯信1), 岡 博文4), 橋本 千鶴5), 梶 龍兒1)

1)徳島大学 神経内科〔〒770-8503 徳島県徳島市蔵本町3丁目18番地の15〕
2)同 医学部保健学科診療放射線講座
3)同 放射線科
4)徳島赤十字病院 脳神経外科〔〒773-8502 徳島県小松島市中田町字新開28-1〕
5)阿南共栄病院 神経内科〔〒779-1198 徳島県那賀郡羽ノ浦町中庄〕

症例は72歳の女性である.記憶力障害,右片麻痺,感覚異常,視覚異常が漸次出現した.特徴的な臨床所見,髄液にてJCウイルスDNA(VP1領域)が陽性であること,画像検査にて白質を選択的に障害する画像所見より,進行性多巣性白質脳症(PML)を疑った.PMLの診断ならびに臨床経過の評価は必ずしも容易ではないが,白質病変の評価として従来の撮像法に加え,拡散テンソル画像(DTI),MRスペクトロスコピー(MRS)を行うことで,経時的変化を捉えることができ病態の把握に有用であると考えられた.

(臨床神経, 46:555−560, 2006)
key words:進行性多巣性白質脳症(PML), JCウイルス(JCV), 拡散テンソル画像(DTI), MRスペクトロスコピー(MRS)

(受付日:2006年2月14日)