臨床神経学

原著

神経内科地域基幹教育病院における,成人発症急性脳炎と臨床的に診断した症例の,臨床・画像・予後に関する検討

道具 伸浩1), 高嶋 修太郎1), 田口 芳治1), 笹原 悦子1), 井上 博2), 田中 耕太郎1)

1)富山大学附属病院神経内科〔〒930-0194 富山市杉谷2630〕
2)富山大学医学部第二内科

急性ウイルス性脳炎(AVE)と急性散在性脳脊髄炎(ADEM)は臨床病理学的にことなる疾患であるが,実際の臨床ではとくに患者が意識障害を示したばあいは,鑑別がしばしば困難である.そこで両疾患の鑑別に有用な病初期の臨床的相違を明らかにするため,過去7年間に意識障害を呈して入院した成人発症急性脳炎をAVE型11例とADEM型8例に臨床的に分類して,臨床像を比較した.AVE型は病初期から意識障害が前景であったが,ADEM型は痙性麻痺,排尿障害,運動失調などの局所神経症状が先行した後に意識障害が進行する特徴を示した.一般にADEMでは先行感染とワクチン接種の存在が重要とされるが,意識障害を呈した患者では病歴の聴取が当初は困難なことが多いので,局所神経症状の先行の有無が,AVEとADEMの病初期の鑑別により有用と考えられた.

(臨床神経, 46:533−539, 2006)
key words:急性ウイルス性脳炎, 急性散在性脳脊髄炎(ADEM), 全身痙攣重積状態, 辺縁系脳炎, 頭部MRI

(受付日:2005年7月22日)