臨床神経学

短報

多発ニューロパチー型感覚障害を呈した胸腰髄部脊髄硬膜動静脈瘻の1例

鈴木 圭輔, 小鷹 昌明, 平田 幸一

獨協医科大学神経内科〔〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880〕

57歳男性例を報告した.両側下肢の異常感覚と筋力低下が出現し,徐々に上行した.レベルを有する胸部の髄節性感覚障害より先に両手指先のしびれ感が前景に立って進展した.脊髄前索における感覚線維の占める位置には,古典的な皮膚分節層状構造とことなり,前後方向にも体性局在が存在し,より前方に上肢が位置するという説がある.脊髄硬膜動静脈瘻の病変が上行するにつれて,脊髄周辺部の病変が側方表面から前方に進展すれば,感覚障害は下肢から上行し,胸腹部にいたる以前に上肢に出現する可能性がある.多発ニューロパチー型の感覚障害を呈する症例では,脊髄硬膜動静脈瘻の存在も考慮する必要がある.

(臨床神経, 46:421−423, 2006)
key words:脊髄硬膜動静脈瘻, 多発ニューロパチー型感覚障害

(受付日:2005年11月9日)