臨床神経学

短報

難治性吃逆,嘔気,失神を呈し,延髄被蓋部病変をみとめた多発性硬化症の1例

芝崎 謙作, 黒川 勝己, 村上 龍文, 砂田 芳秀

川崎医科大学 神経内科〔〒701-0192 岡山県倉敷市松島577〕

症例は多発性硬化症の61歳女性で,吃逆,嘔気,失神のため入院した.座位で収縮期血圧が30 mmHg低下したが,仰臥位でも失神をみとめ,その際に洞停止が捉えられたため,失神の原因として起立性低血圧のみならず洞停止が考えられた.一時ペースメーカー装着を要したが,ステロイドパルス療法で症状は改善した.延髄被蓋部での刺激性病変を推測し,頭部MRIで同部位に微小病変を確認しえた.同様の自律神経徴候のみをみとめたばあい,延髄被蓋部病変を積極的にうたがう必要がある.さらに,延髄被蓋部病変に関連した失神の原因として,起立性低血圧のみならず洞停止も念頭に置くべきである.

(臨床神経, 46:339−341, 2006)
key words:難治性吃逆, 洞停止, 起立性低血圧, 延髄被蓋部, 多発性硬化症

(受付日:2005年8月31日)