臨床神経学

症例報告

睡眠時頭痛(hypnic headache)の本邦3症例

福原 葉子1), 竹島 多賀夫1), 石崎 公郁子1), 鰤岡 直人2), 中島 健二1)

1)鳥取大学医学部脳幹性疾患研究施設脳神経内科〔〒683-8504 米子市西町36-1〕
2)同 統合内科医学分子制御内科学

睡眠時頭痛は夜間就寝中におこる特徴的な頭痛である.日本人の3症例を経験した.症例は48〜70歳の女性で,いずれも夜間就寝中一定時間に頭痛により覚醒し,明らかな随伴症状はなく,群発頭痛とはことなる様相を呈していた.頭部MRIをふくむ各種検査では特記すべき異常をみとめなかった.1例において視床下部下垂体系の関与を示唆すると考えられる心拍変動概日リズムの変化と,TRH負荷試験時のプロラクチン過剰反応をみとめた.3例中2例は炭酸リチウム眠前内服,1例はカフェインの眠前内服が奏功し,3例とも夜間の頭痛は完全に消失した.本疾患は治療可能な一次性頭痛のひとつであり注意が必要である.

(臨床神経, 46:148−153, 2006)
key words:睡眠時頭痛, 片頭痛, 視床下部, 炭酸リチウム, カフェイン

(受付日:2005年7月8日)