臨床神経学

症例報告

胃癌手術後に発症し抗Yo抗体をみとめた傍腫瘍性小脳変性症の1男性例

後藤 あかね, 楠見 公義, 涌谷 陽介, 中曽 一裕, 古和 久典, 中島 健二

鳥取大学医学部脳神経内科〔〒683-8504 鳥取県米子市西町36-1〕

症例は71歳男性である.胃癌手術の7カ月後より歩行困難感,その2カ月後に構音障害が出現し,坐位保持不能となった.初診時,小脳性運動失調をみとめたが,頭部MRIでは脳幹および小脳の萎縮をみとめなかった.患者髄液をもちいたウェスタン・ブロット解析では2つのことなる分子量にバンドをみとめ,免疫組織染色でも患者胃腺癌細胞および正常ヒトPurkinje細胞の細胞質に染色をみとめ,患者の髄液中の抗Yo抗体の存在を裏付けた.抗Yo抗体陽性の傍腫瘍性小脳変性症男性例はきわめてまれであり,貴重な症例と考えられた.

(臨床神経, 46:144−147, 2006)
key words:傍腫瘍性小脳変性症, 胃癌, 男性, 抗Yo抗体

(受付日:2005年5月16日)