臨床神経学

症例報告

皮膚症状が軽度で多彩な神経症候をきたした色素性乾皮症A群の兄妹例

久留 聡1), 安間 みどり1), 酒井 素子1), 小長谷 正明1), 森脇 真一2)

1)国立病院機構鈴鹿病院神経内科〔〒513-8501 三重県鈴鹿市加佐登三丁目2-1〕
2)浜松医科大学光量子医学研究センター光環境医学研究分野〔〒431-3192 静岡県浜松市半田山1-20-1〕

多彩な神経症候を示した色素性乾皮症A群(XP-A)の兄妹例を報告した.兄は16歳時に歩行時のふらつきで発症し,知能低下,小脳失調,痙縮,感覚障害,排尿障害,声帯開大障害などの多彩な症候が進行性にみられた.妹は18歳で発症し,兄とほぼ同様の症状を呈した.両者とも皮膚症状は軽く皮膚腫瘍はなかった.XP-A遺伝子解析ではイントロン3のスプライシング変異とエクソン6の4塩基挿入の複合へテロ変異であった.本兄妹例は軽度の皮膚症状と遅発性で高度な神経症候が特徴であり,これはヌクレオチド除去修復機序のうち,ゲノム全体で働く副経路が比較的保たれ,転写共役修復の障害が強いことによると推定された.

(臨床神経, 46:134−139, 2006)
key words:色素性乾皮症A群, 多彩な神経症候, 複合ヘテロ接合体, ヌクレオチド除去修復

(受付日:2005年3月9日)