臨床神経学

症例報告

Spectacular shrinking deficit回復直後の頭部MRI拡散強調画像

坂井 利行1), 葛原 茂樹2)

1)済生会松阪総合病院神経内科〔〒515-8557 松阪市朝日町1区15-6〕
2)三重大学医学部神経内科

症例1は心房細動を有する74歳の女性で,急性胆嚢炎の治療中に,意識障害,全失語症と右側不全麻痺が突然に出現したが,発症30分後から急速かつ劇的に改善し始め,4時間後には完全に消失した.症例2は84歳の女性で,心房細動を有しワルファリンカリウムの内服中に,意識障害と左片麻痺が突然に出現したが,発症90分後から急速かつ劇的に改善し始め,10時間後にはほぼ完全に消失した.自験2例は,いわゆるspectacular shrinking deficit(SSD)の病態に該当した.拡散強調画像(DWI)において,症例1は左側中大脳動脈灌流域の島皮質と側頭葉,および左側中大脳動脈と後大脳動脈境界域の頭頂葉皮質に,症例2は右側中大脳動脈灌流域の島皮質と前頭葉,および右側中大脳動脈と後大脳動脈境界域の頭頂葉皮質に,高信号を示す新鮮な散在性の虚血性小病変をみとめた.これまでSSD回復直後に虚血性病変を描出したDWIは報告されていないが,DWIはSSDの経過をとる急性期心原性脳塞栓症の早期診断に際し有用である.

(臨床神経, 46:122−127, 2006)
key words:spectacular shrinking deficit(SSD), 拡散強調画像(DWI), 急性期心原性脳塞栓症, 心房細動(Af)

(受付日:2005年1月8日)