臨床神経学

症例報告

静止時振戦を呈したBassen-Kornzweig症候群成人うたがい例

副島 直子, 大八木 保政, 菊池 仁志, 村井 弘之, 重藤 寛史, 吉良 潤一

九州大学大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕

症例は53歳の女性である.幼小児期より両視力障害あり,37歳頃より右手の振戦とふらつき歩行が出現した.両親はいとこ婚.両視力低下,両上肢(右優位)と両下肢の粗大な静止時および姿勢時振戦,運動失調症,深部腱反射消失,四肢の感覚低下をみとめた.末梢血液像で有棘赤血球がみられ,総コレステロール,中性脂肪,アポ蛋白類,脂溶性ビタミン類が著明に低下し,βリポ蛋白がほぼ欠損しており,Bassen-Kornzweig症候群がもっともうたがわれた.ビタミンA,E,K投与により,数日間で静止時振戦が部分的に軽減した.本例では,ビタミンE低下が黒質線条体機能に影響し,パーキンソン病類似の静止時振戦を呈したことが示唆された.

(臨床神経, 46:702−706, 2006)
key words:Bassen-Kornzweig症候群, βリポ蛋白欠損症, 低βリポ蛋白血症, 静止時振戦

(受付日:2006年4月28日)