臨床神経学

症例報告

慢性経過を示したCampylobacter fetusによる髄膜炎の1例

塩山 実章1), 三井 良之1), 上田 治夫2), 高田 和男1), 呉城 珠里1), 北口 正孝2), 楠 進1)

1)近畿大学医学部内科学教室神経内科部門〔〒589-8511 大阪府大阪狭山市大野東377-2〕
2)馬場記念病院神経内科学〔〒592-8555 大阪府堺市浜寺船尾町東4-244〕

C. fetus subsp. fetus(以後C. fetus)による髄膜炎は,何らかの基礎疾患を有する例が多いとされる.今回私達は,健常成人に発症し,細菌性髄膜炎としては症状が軽微で慢性の経過をとり,髄液でも糖の低下が軽度で単核球優位の髄液細胞増多をみとめるなど,細菌性髄膜炎としては非典型的な経過を呈した一例を経験した.最終的に起炎菌はC. fetusと同定されたが,当初は菌の同定が困難であった.このため様々な抗生物質を使用するも難治性であった.慢性化の原因として初期の不適切な抗生剤の使用も否定できない.最終的にはmeropenemが奏効し,臨床症状,髄液所見とも改善した.

(臨床神経, 46:699−701, 2006)
key words:C. fetus, 慢性髄膜炎, 単核球優位細胞増多

(受付日:2006年4月13日)