臨床神経学

症例報告

塩酸チクロピジン関連血栓性血小板減少性紫斑病の1例〜頭部MRI拡散強調画像の検討〜

松田 希, 吉原 章王, 西形 里絵, 松田 俊枝, 遠藤 一博, 山本 悌司

福島県立医科大学医学部神経内科学講座〔〒960-1295 福島県福島市光ヶ丘1番地〕

塩酸チクロピジン関連血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の69歳男性の1例を経験した.塩酸チクロピジン内服1カ月後に発症したTTPで,単純血漿交換療法を実施しすみやかに改善した.TTPの原因である抗ADAMTS13 IgG抗体の産生と血漿ADAMTS13活性の低下が確認された.頭部MRI拡散強調画像で病初期6日間の経過のうちに高信号域の出現と消退の所見をみとめ,境界領域梗塞に類似した病変分布を呈した.これはTTPの病態を理解する上で重要な所見と考えた.従来の報告をもとにTTPのMRI所見の分類を試み,本例のMRI所見を従来の病理報告と近年の病態解明をもとに考察した.

(臨床神経, 46:693−698, 2006)
key words:血栓性血小板減少性紫斑病, 塩酸チクロピジン, 血漿交換療法, ADAMTS13

(受付日:2006年1月25日)