臨床神経学

症例報告

コクシジオイデス髄膜脳炎の1例

中田 美保, 伊藤 彰一, 吉川 由利子, 片山 薫

成田赤十字病院神経内科〔〒286-0041 千葉県成田市飯田町90-1〕
現 千葉大学大学院医学研究院神経病態学

37歳男性が肺炎後にコクシジオイデス髄膜脳炎を発症した.コクシジオイデス症流行地への滞在歴からコクシジオイデス髄膜脳炎をうたがい,血清および髄液中の抗Coccidioides immitis抗体が陽性であったことから確定診断にいたった.しかし,各種抗真菌薬に抵抗性であり,コクシジオイデス髄膜脳炎は徐々に改善したものの,細菌性髄膜脳炎や左被殼出血の合併後に右不全片麻痺や痴呆が残存した.本邦におけるコクシジオイデス症の発症例は急増している.コクシジオイデス症は髄膜炎を併発すると致命的となる.病歴から本症をうたがい,早期に治療を開始することが重要である.

(臨床神経, 45:669−673, 2005)
key words:コクシジオイデス症, 髄膜脳炎, Coccidioides immitis

(受付日:2005年1月27日)