臨床神経学

短報

86歳発症のchorea-acanthocytosisの1例

井川 正道, 米田 誠, 栗山 勝

福井大学医学部 第2内科〔〒910-1193 福井県吉田郡松岡町下合月23-3〕

症例は87歳,女性である.86歳時に,舌・口唇の咬傷をともなう口舌ジスキネジアで初発し,下肢の舞踏様運動,筋萎縮,痙攣,痴呆を呈した.末梢血中に有棘赤血球をみとめ,脂質代謝,Kell抗原発現は正常であったため,chorea-acanthocytosis(ChAc)と診断した.本症例は,ChAcとしては最高齢の発症であり,高齢者においても,咬傷をともなう口舌ジスキネジアをみとめたばあいには,ChAcを考慮すべきであると考えられた.

(臨床神経, 45:603−606, 2005)
key words:有棘赤血球舞踏病, 口舌ジスキネジア, 舌咬傷, 高齢発症

(受付日:2004年11月17日)