臨床神経学

症例報告

視索近傍の石灰化病変により非共同性の同名性四分盲を呈した1例

杉山 幸生1), 森脇 博1), 今北 哲2), 山田 直明2), 田中 正信3), 成冨 博章1)

1)国立循環器病センター 内科脳血管部門〔〒565-8565 大阪府吹田市藤白台5-7-1〕
2)同 放射線診療部
3)同 眼科

症例は小児期に結核性髄膜炎の既往を持つ53歳の女性である.飛蚊症で眼科を受診した際に偶然に右上四分盲を指摘された.右上四分盲は非共同性で左視索の障害を示唆しており,頭部MRI,ヘリカルCTで描出された左視索近傍の石灰化病変がその責任病巣と考えられた.石灰化病変は,部位,血管病変をともなうなどの特徴から小児期結核性髄膜炎由来のものと考えられた.視索障害により同名性半盲をもたらす病変の多くは腫瘍,動脈瘤などで,石灰化をともなう炎症性病変であったとする報告はなく,本例はこの点で貴重な症例と考えられた.

(臨床神経, 45:590−595, 2005)
key words:同名性四分盲, 視索, 石灰化病変, 内頸動脈閉塞, 結核性髄膜炎

(受付日:2004年11月5日)