臨床神経学

症例報告

T細胞性悪性リンパ腫に合併した傍腫瘍性神経症候群(辺縁系脳炎,小脳変性,下オリーブ核仮性肥大)の1剖検例

石原 健司, 鈴木 義夫, 塩田 純一, 河村 満, 中野 今治**

汐田総合病院神経内科〔〒230-0001 横浜市鶴見区矢向1-6-20〕
昭和大学神経内科
**自治医科大学神経内科

症例は死亡時48歳の男性である.全身倦怠感,体重減少に続き,急性の見当識障害にて発症し,小脳性運動失調,眼球運動障害,嚥下障害,四肢遠位部の感覚障害,Romberg徴候をみとめた.頸部リンパ節生検によりT細胞性悪性リンパ腫と診断確定し,化学療法を施行された.悪性リンパ腫は寛解したが,神経症状は残存し,その後進行し,全経過6年半で死亡した.病理学的に辺縁系,小脳,脳幹(下オリーブ核)に変性所見と血管周囲にT細胞性リンパ球浸潤をみとめ,傍腫瘍性神経症候群と診断した.T細胞性悪性リンパ腫に合併した本疾患の報告は少ないが,中枢神経病変は原疾患とことなる進行の機序を有する可能性が示唆された.

(臨床神経, 45:583−589, 2005)
key words:T細胞性悪性リンパ腫, 傍腫瘍性神経症候群, 辺縁系脳炎, 小脳変性, 下オリーブ核仮性肥大

(受付日:2004年10月20日)