臨床神経学

症例報告

遺残原始舌下動脈をともなう内頸動脈起始部狭窄病変により,一過性視力障害をきたした1例

湯浅 浩之, 三竹 重久, 小栗 卓也, 三浦 敏靖, 鳥居 孝子, 加藤 大輔

公立陶生病院神経内科〔〒489-8642 愛知県瀬戸市西追分町160〕

遺残原始舌下動脈をともなう内頸動脈起始部狭窄に起因した,一過性脳虚血発作症例を報告した.症例は73歳の男性である.数分間の両側皮質盲にひき続き,約一時間の右眼の一過性黒内障をきたした.頸動脈エコー,脳血管撮影にて右内頸動脈起始部に75%狭窄をみとめ,同血管のC2椎体レベルから遺残原始舌下動脈を分岐していた.右椎骨動脈起始部は無形成,左椎骨動脈は低形成であり,右内頸動脈起始部病変が両側後大脳動脈と右眼動脈の一過性虚血をきたしたと考えられた.遺残原始舌下動脈を分岐する内頸動脈の狭窄病変は,頸動脈および椎骨脳底動脈領域の虚血症状を同時に発症する可能性があり,病変診断に困難をきたすことがあるため注意を要する.

(臨床神経, 45:579−582, 2005)
key words:遺残原始舌下動脈, 一過性脳虚血発作, 皮質盲, 一過性黒内障, 頸動脈内膜剥離術

(受付日:2004年10月15日)