臨床神経学

症例報告

運動ニューロン疾患との鑑別を要したサルコイドーシスの1例

小出 隆司1), 金澤 雅人1), 新保 淳輔1), 浦山 勝裕2), 八木 伸夫3), 土田 昌一3), 斎藤 謙4), 石黒 英明1)

1)秋田赤十字病院神経内科〔〒010-1495 秋田市上北手猿田字苗代沢222番地1〕
2)同 耳鼻科
3)同 胸部外科
4)同 病理部

症例は50歳の女性である.2カ月間に約10 kgの体重減少があり,その後嚥下障害,嗄声が急速に出現し当科受診した.軟口蓋挙上不良,舌筋線維束攣縮,嗄声,頸筋および四肢の筋力低下,肺活量低下があり運動ニューロン疾患をうたがわれ入院.血清リゾチーム高値,髄液蛋白および細胞数の上昇,針筋電図にて神経原性変化,画像上両側肺門部リンパ節腫脹をみとめ,斜角筋生検にてサルコイドーシスと診断した.ステロイド内服後すべての症状が改善し,とくに嚥下造影検査が機能回復の評価に有用であった.このような経過をとる例では治療が可能であり,運動ニューロン疾患との鑑別が重要である.

(臨床神経, 45:485−489, 2005)
key words:サルコイドーシス, 運動ニューロン疾患, 斜角筋生検, 嚥下造影検査, ステロイド治療

(受付日:2003年12月27日)