臨床神経学

症例報告

脳MRIにて病巣が大脳皮質におよびSPECTにて広汎な大脳血流低下を呈しHTLV-I感染の関与が考えられた進行性多巣性白質脳症の1例

高瀬 敬一郎1), 大八木 保政1), 古谷 博和1), 長嶋 和郎2), 谷脇 考恭1), 吉良 潤一1)

1)九州大学大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
2)北海道大学大学院医学研究科分子細胞病理〔〒060-8638 札幌市北区15条西7丁目〕

症例は47歳女性である.HTLV-Iキャリア.亜急性の右片麻痺,運動失語にて発症した.左耳下腺・頸部の悪性リンパ腫と右鼠径部の基底細胞癌を合併していた.高度の運動失語,感覚失語あるいは認知障害,右片麻痺,左上肢の肢節運動失行,観念運動失行,失書,保続,四肢の著明な痙縮・腱反射亢進,両側病的反射をみとめた.頭部MRIで左優位の大脳白質と一部皮質におよぶT2高信号病変がみられ,99mTc-SPECTでは広汎な大脳血流低下をみとめた.生検脳組織の免疫染色および髄液JCウィルスDNA解析により,進行性多巣性白質脳症と診断された.本例では,中枢神経に潜在するHTLV-IがJCウィルスの増殖を促進した可能性が考えられた.

(臨床神経, 45:426−430, 2005)
key words:進行性多巣性白質脳症, JCウィルス, HTLV-I, SPECT

(受付日:2004年8月20日)