臨床神経学

症例報告

頭痛および片麻痺にて急性に発症した延髄グリオーマの1剖検例

石原 健司, 塩田 純一, 河村 満, 中野 今治**

汐田総合病院神経内科〔〒230-0001 横浜市鶴見区矢向1-6-20〕
昭和大学神経内科
**自治医科大学神経内科

頭痛および右片麻痺にて急性に発症し,剖検にて延髄グリオーマと診断した89歳,女性例を報告した.当初は脳梗塞と診断したが,治療開始後も右片麻痺が進行し,眼振,嚥下障害,対側の麻痺,中枢性換気障害も出現した.肺炎により全経過約5週間で死亡.病理学的検索により,延髄から高位頸髄にかけてのグリオーマ(退形成性星細胞腫)と診断した.急性の片麻痺にて発症し,脳血管障害との鑑別が困難な脳幹グリオーマ症例はこれまでに5例の報告があるが,本例は最高齢であり,かつ急速な進行を呈していた.脳血管障害の危険因子を有する高齢者でも,急性の片麻痺を呈する疾患の鑑別に,延髄グリオーマを考慮する必要があるものと考えられた.

(臨床神経, 45:362−367, 2005)
key words:脳腫瘍, 急性発症, 脳血管障害, 高齢者

(受付日:2004年7月14日)