臨床神経学

短報

下肢静脈エコーで可動性を有する深部静脈血栓をみとめた奇異性脳塞栓症の1例

山下 眞史1)2), 稲富 雄一郎1), 松浦 大輔1), 米原 敏郎1), 橋本 洋一郎3), 平野 照之4), 内野 誠4)

1)済生会熊本病院脳卒中センター
2)現 国立病院機構熊本再春荘病院神経内科〔〒861-1196 熊本県菊池郡西合志町大字須屋2659〕
3)熊本市立熊本市民病院神経内科
4)熊本大学大学院医学薬学研究部神経内科学分野

症例は68歳の女性である.右中大脳動脈領域の脳塞栓症で入院した.経食道心エコーで卵円孔開存があり,下肢静脈エコーで後脛骨静脈末梢から浅大腿静脈の大伏在静脈合流部にかけて連続する,先端に可動性を有する静脈血栓をみとめた.また肺血流シンチグラムでは肺塞栓症の合併も確認された.塞栓症予防のためワルファリンカリウムを投与し,下大静脈フィルターを挿入した.以後は塞栓症の再発は確認されていない.奇異性脳塞栓症患者には,本例のように塞栓症続発の危険性の高い可動性静脈血栓を有するものがあり,可動性の評価や経過観察に適した検査法である下肢静脈エコーが必要であると考えた.

(臨床神経, 45:324−327, 2005)
key words:下肢静脈エコー, 深部静脈血栓, 奇異性脳塞栓症, 卵円孔開存

(受付日:2004年8月30日)