臨床神経学

症例報告

視覚症候をともなわなかった前兆のある片頭痛の1例

鹿井 聖子1), 稲富 雄一郎1), 米原 敏郎1), 藤岡 正導1), 橋本 洋一郎2), 平野 照之3), 内野 誠3)

1)済生会熊本病院脳卒中センター〔〒861-4193 熊本市近見5-3-1〕
2)熊本市立熊本市民病院神経内科
3)熊本大学大学院脳神経科学講座神経内科学分野

症例は22歳男性である.一過性の右手のしびれ感と失語が出現した後に激しい拍動性の頭痛が出現した.放射線学的検査では脳血管障害を示唆する所見はなし.脳血管造影終了直後に左手のしびれ感と単麻痺,続いて右手のしびれ感が相次いで出現したが15分程で消失した.その後右こめかみ奥の拍動性の頭痛が始まり全体に広がった.本症例は前兆のある片頭痛と診断したが,前兆として視覚障害をともなわずに失語と感覚障害が出現した報告はまれであると考えられた.

(臨床神経, 45:216−220, 2005)
key words:片頭痛, 前兆, 失語, 感覚障害, 脳血管造影

(受付日:2004年4月14日)