臨床神経学

症例報告

スギヒラタケ摂食後に発症した脳症の2例:脳画像の経時的変化および脳波所見

黒川 克朗1), 佐藤 裕康1), 中嶋 凱夫2), 川並 透3), 加藤 丈夫3)

1)山形県立新庄病院神経内科
2)山形県立新庄病院内科
3)山形大学医学部生命情報内科学(神経・内分泌代謝・血液)〔〒990-9585 山形市飯田西2-2-2〕

スギヒラタケ摂取後に脳症を発症した,血液透析治療中の腎不全患者2例を報告した.症例1は54歳男性である.下肢の脱力,構音障害の後,けいれん重積状態,意識障害が出現した.発症時の脳MRIおよび髄液検査には異常をみとめず,発症6日目に脳MRIで基底核に異常所見をみとめた.症例2は79歳女性である.左上肢の振戦の後けいれん重積状態,意識障害が出現した.本例も発症時脳CTに異常をみとめず,発症4日目に基底核に異常所見をみとめた.両例とも脳波でPSDをみとめた.各種ウイルス抗体価検査で原因を特定できなかった.類似の画像所見はメタノール中毒で報告されており,本例も環境中の有害物質あるいはスギヒラタケ自身の未知の毒素が原因となる可能性が考えられた.

(臨床神経, 45:111−116, 2005)
key words:スギヒラタケ, 血液透析, 意識障害, けいれん, 基底核

(受付日:2004年11月9日)