臨床神経学

第46回日本神経学会総会

<シンポジウム10-4>難治性ニューロパチーの新しい治療戦略
家族性アミロイドポリニューロパチーの新たな診断・治療法の開発

安東 由喜雄

熊本大学大学院医学薬学研究部, 病態情報解析学分野〔〒860-0811 熊本市本荘1丁目1-1〕

家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)はトランスサイレチン(TTR)の遺伝子変異が原因となっておこる予後不良の遺伝性疾患である.主としてTTRが肝臓で産生されることから肝移植がおこなわれるようになったが,いくつかの問題点がある.TTRは血中を4量体で挙動するが,遺伝子変異がおこると立体構造が変化し,4量体が不安定となりアミロイド形成が進む.これに対しCr3+はTTRの4量体を安定化させ,in vitroでのアミロイド形成を抑制する.BSBはin vitro,in vivo両面で,様々なアミロイドーシスの組織沈着アミロイドを検出する有用な試薬であるが,アミロイド自体に強く結合することから,治療薬としての可能性も期待される.Single stranded oligonucleotides(SSOs)はアテロコラーゲンに抱埋すると,核に取り込まれることから,FAPの遺伝子治療薬としても有望である.アミロイド化するとき新たに出現するTTRに対する抗体を誘導するため,ATTR Y78Pをアミロイド沈着をきたしたトランスジェニックマウスに免疫したところ,criptic epitopeに対する抗体が誘導され,アミロイド沈着が有意に減少した.これらの治療法は,肝移植に変わる治療戦略として期待される.

(臨床神経, 45:969−971, 2005)
key words:家族性アミロイドポリニューロパチー, トランスサイレチン, アミロイドーシス, 遺伝子治療, 抗体治療

(受付日:2005年5月27日)