臨床神経学

症例報告

髄膜脳炎を呈したHIV初期感染の1例

大村 真弘1)*, 西 和男2), 寺井 正1), 重野 幸次1)

1)静岡市立清水病院 神経内科〔〒424-8636 静岡市清水区宮加三1231〕
現 国立循環器病センター 内科脳血管部門〔〒565-8565 大阪府吹田市藤白台5-7-1〕
2)静岡市立清水病院 内科

HIV初期感染の急性感染期症状として髄膜脳炎を呈した23歳男性例を報告した.発熱,咽頭痛などの感染症状が2週間持続した後,全身性痙攣および意識障害を呈した.髄液では単核球優位の細胞数増加をみとめた.頭部MRIでは脳実質には異常をみとめなかったが,脳波では全般性徐波化をみとめた.各種ウイルス抗体価はペア血清で有意な増加をみとめなかった.入院時の血中抗HIV抗体が陽性でありWestern blot法にてもgp160およびp24に相当するバンドが陽性であったが,4カ月後のWestern blot法では全バンドが陽性でありHIV初期感染と診断した.本例はHIV初期感染の急性期症状として髄膜脳炎を呈した貴重な症例である.

(臨床神経, 45:754−757, 2005)
key words:HIV感染症, 髄膜脳炎, 初期感染

(受付日:2005年3月18日)