臨床神経学

症例報告

長期間人工呼吸器装着中に“たこつぼ型心筋症”を併発した筋萎縮性側索硬化症の1例

三谷 真紀, 舟川 格, 陣内 研二

独立行政法人 国立病院機構 兵庫中央病院 神経内科〔〒669-1592 兵庫県三田市大原1314〕

症例は59歳女性である.1997年(52歳)4月頃から構音障害,嚥下障害が出現した.その後進行性の四肢筋力低下も出現し,筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された.1998年10月から人工呼吸器を装着して長期臥床中であった.2004年12月6日深夜突然ショック状態となった.心エコーでは左室壁心尖部の動きは著明に低下し,心基部が過剰収縮していたが,6日後には壁運動は完全に回復した.臨床経過,検査結果からたこつぼ型心筋症を併発したと考えられた.本例は,長期間の人工呼吸器装着中のALSにたこつぼ型心筋症を併発したはじめての報告である.ALSの長期の合併症の一つとして,たこつぼ型心筋症を念頭におく必要がある.

(臨床神経, 45:740−743, 2005)
key words:筋萎縮性側索硬化症, 自律神経障害, たこつぼ型心筋症

(受付日:2005年2月21日)