臨床神経学

症例報告

Brown-Séquard症候群を呈した後脊髄動脈梗塞の1例

久我 敦, 三谷 真紀, 舟川 格, 陣内 研二

独立行政法人 国立病院機構 兵庫中央病院 神経内科〔〒669-1592 兵庫県三田市大原1314〕

症例は56歳の女性である.誘因なく左腰部に疼痛が出現した後,左下肢の単麻痺と尿閉を呈した.また左側第10胸髄〜第11胸髄領域の全感覚脱失と右下肢の温痛覚障害と左下肢の位置覚・振動覚障害があり,Brown-Séquard症候群を呈していた.MRIでは第9胸椎から第10胸椎のレベルで左脊髄後索に限局したT2高信号域をみとめ,後脊髄動脈領域の梗塞と考えた.体性感覚誘発電位検査にて後索障害が一側性であることが確認された.2カ月後に患者は杖歩行が可能になったが感覚障害は改善しなかった.後脊髄動脈領域の梗塞によって呈したBrown-Séquard症候群を神経解剖学的に考察し報告する.

(臨床神経, 45:730−734, 2005)
key words:脊髄梗塞, Brown-Séquard症候群

(受付日:2004年12月14日)