臨床神経学

症例報告

めまいのみを呈し,新たなNotch 3遺伝子変異をともなうCADASILの早期例

松本 英之1), 津本 学1), 山本 知孝1), 高橋 慶吉2), 田平 武2), 宇川 義一1), 辻 省次1)

1)東京大学医学部附属病院 神経内科〔〒113-8655 東京都文京区本郷7丁目3番1号〕
2)国立療養所中部病院長寿医療センター〔〒474-8511 愛知県大府市森岡町源吾36-3〕

症例は39歳女性で,2カ月前からのめまいを主訴に当科に入院した.神経学的所見として,左上下肢の深部腱反射軽度亢進のみをみとめた.頭部MRIで側脳室周囲深部白質・外包に病変が存在した.祖母・父に多発性脳梗塞,同胞6人中少なくとも2人に若年発症の脳血管障害をみとめ,常染色体優性遺伝を示す遺伝性脳血管障害をうたがった.Notch3遺伝子にC206Rのミスセンス変異という今までに報告のない遺伝子変異をみとめ,CADASILと診断した.既知の遺伝子変異では報告のないめまいを,新しい遺伝子変異である本例と同疾患と考えられる同胞2例にみとめた点は興味深い.本家系のMRI所見は,CADASILでは早期から外包病変が存在するという従来の知見と一致しており,外包病変をみとめるばあいには,CADASILを鑑別に挙げるべきであると考えた.

(臨床神経, 45:27−31, 2005)
key words:CADASIL, めまい, Notch3遺伝子変異, 外包

(受付日:2004年2月27日)