臨床神経学

短報

両側テント上梗塞発症直後に除脳硬直を呈した1例

河野 浩之1), 菅 智宏1), 寺崎 修司2), 橋本 洋一郎1), 丸田 佳代3), 山部 浩茂3), 内野 誠4)

1)熊本市立熊本市民病院神経内科〔〒862-8505 熊本市湖東1-1-60〕
2)同 脳卒中診療科
3)同 循環器科
4)熊本大学大学院脳神経科学講座神経内科学分野

症例は77歳女性である.2003年6月30日近医で心房細動を指摘されジギタリス製剤,塩酸ピルジカイニドを開始した.7月7日に洞停止をともなう徐脈をみとめたため両薬剤を中止した.その後,心電図は洞調律にもどったが意識障害出現し7月8日に当院循環器科に入院した.7月9日には意識はほぼ清明となった.7月10日座位で会話をしていたが突然意識レベルが低下(JCS III-200〜300),頭位変換眼球反射は陽性,除脳肢位,左共同偏視,両側Babinski徴候陽性となった.MRIでは拡散強調画像で両側後大脳動脈領域,右中大脳動脈領域を除き,広範に著明な高信号域をみとめた.両側内頸動脈系の同時閉塞による両側テント上の大梗塞で除脳硬直を来した1例であった.

(臨床神経, 44:545−548, 2004)
key words:脳梗塞, 両側内頸動脈閉塞, 除脳硬直, 心房細動

(受付日:2003年10月11日)