臨床神経学

短報

腫瘍塞栓後に転移性脳腫瘍を形成した悪性線維性組織球腫の1例

今村 恵子, 和田 健二, 安井 建一, 中曽 一裕, 渡辺 保裕, 古和 久典, 中島 健二

鳥取大学医学部脳神経内科〔〒683-8504 鳥取県米子市西町36-1〕

症例は61歳男性である.大腿軟部腫瘍摘出術の既往があり,組織学的に悪性線維性組織球腫と診断されていた.意識障害,失語にて脳塞栓症を発症し,脳梗塞の治療をおこなったところすみやかに症状の改善をみとめた.しかし,約2カ月後,運動失調増悪,構音・嚥下障害が出現し,MRIで梗塞巣と同部位に多発性の腫瘍性病変をみとめた.腫瘍塞栓により脳塞栓症を発症し,塞栓部位で栓子から腫瘍が発育して転移性脳腫瘍を形成したと推測した.腫瘍塞栓子からの転移巣形成を画像にて確認した報告はなく,貴重な症例と考えた.

(臨床神経, 44:446−449, 2004)
key words:脳塞栓症, 腫瘍塞栓, 転移性脳腫瘍, 悪性線維性組織球腫, 拡散強調画像

(受付日:2003年7月16日)